空中ブランコと自己責任
新年早々から巷で話題と議論になっている「派遣村」に端を発する貧困の「自己責任論」について、ここ数日様々な思いを巡らせていました。
僕は基本的に何事も全てにおいて「自己責任」だというのが持論でしたが、簡単にそう言い切ってしまうことに違和感を覚えて来たというか。
議論されるキーワードの一つに「日本のセーフティネットの貧弱さ」があります。
さて、ここにあるサーカス団があります。
団員は全員「空中ブランコ」をやらなければなりません。
団員の中には
・親も空中ブランコをやっていて小さい頃から教わっていた人
・親がお金持ちで、家に空中ブランコのセットがあった人
・貧しい家庭の育ち、サーカスなど見た事もない人
・生まれつき高所恐怖症の人
・本当は、猛獣使いが得意な人
まだまだ様々な人がいるでしょう。
これらの境遇は少なくとも「自己責任」ではないでしょう。
容赦なく団長は言います。
「下にはセーフティネットがある。しかし、ネットの網目は人の大きさくらいあるから、もしかしたらネットに引っかからず、そのまま落ちて死ぬかもしれない。死ぬのがイヤだったら、努力しろ。落ちるのは気合いと練習が足りないからだ。そうだ自己責任だ。よし全員やってみろ!」
なにやら厳しい状況です。
得意な人は楽勝でこなすでしょう。
「落ちて死ぬのがわかってるなら、挑戦するだけ無駄」
「どうせ落ちるなら、最初からネットに向って飛びおりよう」
「高いところ無理です。ブランコ以前にココに立つのも無理です」
と考える人もいるでしょう。
「やればできる!」と前向きに考え実行した結果、命を落とす人もいるでしょう。
団長はこう言います。
「ウチはお金がないので、まともなセーフティネットが用意できません。用意するためには他の団員のギャラを減らさなくてはなりません。」
「そもそもサーカスとは命懸けで行うものです。落下するのはプロとしてスキルや努力が足りない証拠です。そんな人のために高性能なネットを買う必要はありません。落ちたら死ねばいいんです。自己責任です。」
このサーカス団での死者は年間3万人を超えるらしい。
天性の才能でブランコをマスターした団員もいるでしょう。死ぬ気で頑張ってマスターした団員もいるでしょう。
その人たちから見れば、
「オレは落ちる心配ないからネットはいらん。オレだって最初から上手くできたわけじゃない。自分の努力のおかげだ。ギャラ減ってまで出来ない奴らの為にネットを買う必要はない」
という気持ちになることもあるでしょう。
「あいつらが出来ないのは努力が足りないからだ」
とも思うでしょう。
しかし、様々な境遇の団員たちが全員、同じ結果を出す事は難しい。せめて一回の落下くらいで命を落としたり重傷を負う危険度は回避したい。そして、上手くできている人だって万が一ミスして落ちる事があるかもしれない。
団員全員で安全なネットを買うべきじゃないかな。
※団員の中にはセーフティネットのモロさを知らずに、適当にブランコをやって落下し、重傷を負った際
「ネットがこんなモロいなんて聞いてなかったぞ!知ってたらマジメに練習したのに。あーあ適当にやって損した。それより、このケガどうしてくれるんだ!団長責任取れ!他の団員も同罪だ!一生オレの面倒を見ろ。もちろんオレは何もする気はないぞ」
という人も出て来るでしょう。
また、安全なネットを買った途端に努力を怠る人も出て来るでしょう。
正直、こういう人には同情したくないですが、この一面だけを見て、全てがこんな人だと認識してしまうのは危険です。レアケースとして我慢するしかありません。その他大勢の一生懸命やってる人を見ましょう。
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コメント
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おはよう御座います。
分かりやすい例え ありがとう御座います。
この文面を 子供に話すとき 使わせてもらいます。
危ない世界だということは 一目瞭然、
団長のことが信用できなくなったなら
セーフティーネットや 命綱を 自分で 付けるしかないんですよね。
つまり 頼って生きていくことも大事なんだけど 出来ることなら 頼らずに過ごす 癖も付けておくべきだと・・・ おおよそ 人付き合いが下手な人が多い昨今なので、土台から 変えないといけないのかな?なんて 私も 思っています。
なんだかんだ いって 昭和の 雰囲気が 懐かしいです。
投稿: kaiesan | 2009年1月10日 (土) 05:47
私は、この立場です。
色々な理由から『派遣社員』という道をとっていて、まさに一か八か飛ぼうとしているところです。
投稿: uta | 2009年1月11日 (日) 23:29
レス遅くなりました。。。。
kaiesanさん>
子供への説明に使っていただけたら幸いです
utaさん>
選択肢はいっぱいあっていいと思うんですが、
「たった一度の判断ミス」で再チャレンジが不可能になったり、結果として「生きていくことすらままならない」という状況にまで陥ってしまう「選択肢」が存在することが問題ですね。
「失敗から学ぶ」なんていう言葉は、もはや贅沢なのかもしれません。
投稿: たつ | 2009年1月13日 (火) 13:07
私はセーフティネットを片手でつかんでいる状態でしょうか?www
なんとかよじ登ろうと思案中です。
「失敗から学ぶ」…確かにたくさん失敗してきて、たくさん学んできましたが、ここから這い上がるのはものすごーーーく大変です^^;
投稿: しょうこ | 2009年1月16日 (金) 10:36
エジソンの言葉に
「私は実験において失敗など一度たりともしていない。これでは電球は光らないという発見を今までに、2万回してきたのだ。」
というのがありますが、これは2万回も挑戦する環境があってこその話。光らないだけならまだしも、実験中に爆発したら終わり。。。。。
投稿: たつ | 2009年1月16日 (金) 21:36