報酬がもたらすクリエイティビティの限界
問題です。
Q:テーブルの上にロウソクと、画鋲と、マッチがあります。
テーブルに蝋がたれないようにロウソクを壁に取り付けてください。
考えてみましょう。
同時に、出題状況が下記2パターンだった場合、どちらのグループが早く問題を解けたと思いますか?
予想してみましょう。
- Aグループには
「問題を解くまでの平均時間を計りたい」と伝える (報酬なし)- Bグループには
「上位25パーセントの人には 5ドルお渡しします。1番になった人は 20ドルです」と伝える (報酬あり)
正解は・・・
わかりましたか?
画鋲が入っている箱を「台」として使うアイデアが勝負の分かれ目です。
そして、もう1つの問題、AグループとBグループではどちらが、早く解答できたか?という予想問題。
答えは・・・「Aグループの方が早かった」
BグループはAグループと比較して平均3分半も長くかかりました。
報酬のないAグループの方が早かったわけです。
ちょっと不思議な気がしますね。
では、この絵で同じ問題だったらどうでしょうか?
これなら簡単ですね。
これも同じく、A,Bの両グループに同条件で出題します。(メンバーは総入れ替え)
結果は・・・「Bグループの方が早く解答できた」
報酬のあるBグループが勝ったわけです。
これらの結果から何が言えるのか。
- 報酬は「単純なルールと明確な答えがある場合」には非常に有効である。
- 報酬は「視野を狭め可能性を限定してしまう」
ここで考えてみましょう。
現代の我々の仕事、さらに未来を予測した場合に、「単純なルールと明確な答えがある仕事」は増えていくでしょうか?
答えは明白です。激減します。
そして、単純な仕事は限りなく機械へとシフトしていくでしょう
よって以下のことが言えます。
21世紀的な答えのないタスクで高いパフォーマンスを出そうと思うのなら、間違ったことをこれ以上続けるのはやめるべきです。人をより甘いアメで誘惑したり、より鋭いムチで脅すのはやめることです。まったく新しいアプローチが必要なのです。
- 20世紀的な報酬、ビジネスで当然のものだとみんなが思っている動機付けは、機能はするが驚くほど狭い範囲の状況にしか合いません。
- If Then式の報酬は、時にクリエイティビティを損なってしまいます。
- 高いパフォーマンスの秘訣は報酬と罰ではなく、見えない内的な意欲にあります。自分自身のためにやるという意欲、それが重要なことだからやるという意欲。
以上のことが詳しく下記サイトおよび動画で発表されています。興味ある方は是非フルで見てください。
やる気に関する驚きの科学 (TED Talks)
View subtitlesをクリックして「Japanese」を選択すると日本語字幕が出ます。
ここからは僕の見解です。
「報酬によって人々のクリエイティビティやモチベーションを上げる方法は現代では通用しない!」
というのが簡単な結論なわけですが、確かにそう思います。
極端な言い方ですが、報酬の大小によって「頭の良し悪し」や「能力の高低」を調整できるわけないですからね。能力を出し惜しむことは出来ても、ない袖を振ることは出来ないわけで。
この研究発表の主旨とはズレてきますが、
この結果を踏まえて僕が考えるのは
「能ある鷹は爪隠すつもり症候群」(命名オレw)
についてです。
僕が言う「能ある鷹は爪隠すつもり症候群」とは
こんな風に考えてる人です。
「この程度の報酬でオレが本気出すわけないだろ」
「報酬に応じた力加減で仕事すりゃいいや」
とかw
「報酬が割に合わない」という理由を建前に、爪を隠したつもりになってる人。
あくまでも「隠したつもり」ってところがポイントで、実際は持っていない能力を過剰に見積もっている「根拠のない全能感」。その自己評価が客観性を著しく欠いている人。
※追記:この言葉がぴったりでした⇒仮想的有能感
こういう人って決して少なくないと思ったりしてるんですが、どうでしょうかね?
なぜなら、僕もかつては典型的なそのタイプだったからですw
でも、ある時から(大きなキッカケがあったわけではないですが・・)こう考えるようになりました。
「たかが報酬」、「たかが会社」という、くだらない外的要件によって、自分の能力の限界を設定してしまうのは勿体な過ぎると。
※ここで言う「限界」とは無駄な長時間労働などの「根性・体力系」のことではないので誤解なく!
そして、当たり前のことなんですが、
「報酬の高い人は能力が高くなる」のではなく
「高い能力を発揮できる人が高い報酬を得る」んですよね。
ということは、報酬に応じて自分の力加減をコントロールしていては、いつまでたっても望むような報酬は得られないのが当然であって、むしろ、「求めるレベルの報酬を貰えない自分」を自らが演じてしまってるという悪循環を生んでしまうわけです。
そんな風に考えるようになってからは、外敵要件に反応することなく、
「自分の能力・才能の限界を知りたい」
という単純な欲望に目覚めましたw。
そこを目標にしてみると(達成度は別として)、外的要件は気にならなくなりました(全くというわけではないですが)。そして、気にならなくなってみると、好条件が自然と寄って来るようになった気がします。
なぜ、こんな謎の独白wをしてるのかというと、
最近、仕事で関わる若い世代を見ていて、
「能ある鷹は爪隠すつもり症候群」
が非常に多いと感じるんです。
と同時に、正直言って
「その程度の爪を隠してどうすんの?」
とツッコミたくなることが多いんです。
(僕もそう思われてる可能性大ですがw・・それは置いておく)
自信を持つのは大いに結構なんですが、自分が同じ道を通ってきた経験者として言えるのは、その自信って、実は「自分の真の実力を知ってしまうことへの恐怖」を隠す為の強がりだと思うんですよね。
爪を隠していたつもりの時、突然こう言われたらどうでしょう?
「明日から年俸1億円あげます。だからそれ相応の能力を発揮してくださいね」
さて、あなたの能力に1億円の価値はありますか?
今まで報酬に応じて「隠していた爪」を見せつけるチャンスですよ!
とは言っても、この状況に順応できる人は皆無でしょうね。
極端な例でしたが、結局、
「能力によって報酬が変わる」はYESでも、
「報酬によって能力が変わる」はNOなのです。
だったら、報酬云々の能書きは言わず、いつ使えるかわからなくとも、常に爪を磨いておくべきで、隠してる余裕なんかないんじゃないかと(実際は隠すような代物ではないんですが)。それどころか、隠した気になったまま、すでに失ってる可能性だってあるし、もともと存在しない幻の爪かもしれない。調子こいて強がってる場合じゃないんです。特にこれからの時代はね。
と
かつての自分へのメッセージw。

« なごみたいとき | トップページ | 新型「フェアレディZ ロードスター」を10月に発売 »
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- ToDo管理もデジタルデトックス!(2013.08.30)
- 一度も晴れなかったGW(2013.05.07)
- 最北端の激辛カレー(2013.05.02)
- 青い池(2013.05.01)
- Tremendous Snowfall(2013.03.20)
コメント
この記事へのコメントは終了しました。
ない袖は振れない自分はどうすればいいんだ??(笑)
投稿: masa@azure | 2009年9月 3日 (木) 22:20
おいおい!
振り切れないくらい袖だらけじゃん。
投稿: たつ | 2009年9月 4日 (金) 00:10
そーいえば,金融危機の原因の一つに業績に連動した過剰な報酬があげられているんですよね。
で,サミットとかで報酬に制限をかけようって話になってて,なんか違和感があったんですが,たつさんの説明で結構すっきりしました。
報酬にかかわらず,才能があって意欲のあるヤツは自己実現しようとしますからね。(で,すんごいリスク取りに行って破綻するわけですが。)
投稿: どりあん | 2009年9月 7日 (月) 04:58
どりあんさん>
なるほど、その話は知りませんでした。
投稿: たつ | 2009年9月 7日 (月) 22:08
こんにちは。コメントの仕方これでいいんでしょうか。
私の場合、はじめの方は、つかみどころのないのと、報酬があるってことで競争が恐くて諦めちゃうかもしれないです。
どっちにしても、答え分からなかったですけど…
投稿: ひまわり | 2009年9月15日 (火) 10:16
ひまわりさん>
コメントありがとうございます
投稿: たつ | 2009年9月15日 (火) 12:33