モチベーション3.0 【書評】
今話題の「モチベーション3.0」読みました。新時代の新たなバイブルとなりそうな良書。
概要としては・・・
「モチベーション」の認識について、科学と知識とビジネスの現場には大きなギャップがある。これまで長い間、他者に対するモチベーションコントロールの手法として使われ続けている「アメとムチ (モチベーション2.0)」という外部的動機付けは、うまくいかないし、むしろ有害な場合も多い事が科学的に証明されている。アップグレードが必要だ。これからの時代のアプローチ「モチベーション3.0」には3つの重要な要素がある。
<自律性>〜自分の人生を自ら導きたい欲求〜
<マスタリー>〜自分にとって意味のあることを上達させたいという衝動〜
<目的>〜自分の利益を超えたことのために活動したいという切なる思い〜
の「内発的動機付け」である。
という話。
本著には、様々な実験事例が登場する。
以前、本ブログでも紹介したことのある「ロウソクの問題」については、有名な動画があるので興味のある方は是非ご覧ください。報酬の有無がクリエイティビティに与える影響についてよくわかります。
ダニエル・ピンク 「やる気に関する驚きの科学」 from aoky on Vimeo.
僕が個人的に興味を持った実験は以下のもの。
芸術家数名に、「受注作品」と「自主制作作品」を無作為に10作品選んでもらう。そして、この実験について何も知らされていない優れた芸術家と学芸員たちに、これらの作品を渡し、評価を依頼する。
さて、評価結果はどうなったと思いますか? 本を読んで確認してくださいw
あとは、いろいろ抜粋しながら僕なりの解釈を。
アメとムチが致命的な7つの欠陥極論だが、「テストで100点取ったら、1万円あげる」あるいは、「0点取ったら、おこづかい没収!」という方法は、最終的にカンニングという行為を誘発する可能性が高い。ビジネスにおける「他者から与えられる数値目標」も同じで、世の中のスキャンダルや不正行為を生む大きな要因となっている。なんらかの結果や行動に対して報酬を約束するということは「その行動は相手がお金を出さざるを得ないほど、つまらないことで、誰もやりたくないこと」という認識を植え付ける危険性が伴う。そして、勉強することの目的、数値を達成したその先、の視野を遮断し、近道だけを模索することになると同時に、本人に達成感や満足度が満たされることもない。
1、内発的動機づけを失わせる
2、かえって成果が上がらなくなる
3、創造性を蝕む
4、好ましい言動への意欲を失わせる
5、ごまかしや近道、倫理に反する行為を助長する
6、依存性がある
7、短絡的思考を助長する
ある活動に対する外的な報酬として金銭が用いられる場合、被験者はその活動自体に本心から興味を失う
ただし、報酬が有効な場合も当然ある。
報酬には本来、焦点を狭める性質が備わっている。解決への道筋がはっきりしている場合には、この性質は役立つ。前方を見すえ、全速力で走るには有効だろう。だが、「交換条件つき」の動機づけは、ロウソクの問題(画鋲の箱をロウソク台に転用する)のように発想が問われる課題には、まったく向いていない。広い視野で考えれば、見慣れたものに新たな用途を見つけられたかもしれないのに、報酬により焦点が絞られたせいで功を焦ってそれができなかったのであるアルゴリズム的な仕事(ルーチンワーク)には報酬の有効性は未だある。しかし、ヒューリスティック的な仕事(非ルーチンワーク、右脳的)に報酬の効果は薄い。20世紀は前者の仕事が多くを占めていたが、マッキンゼーによると、アメリカでは現在アルゴリズム的な仕事は全体の30%であるという。先進国において、今後さらに縮小することは間違いない。よって、この先、報酬の効果が薄れ、むしろマイナスに作用することも懸念される状況にある。
では、どうする?
21世紀は、「優れたマネジメント」など求めていない。マネジメントするのではなく、子供の頃にはあった人間の先天的な能力、すなわち「自己決定」の復活が必要なのである。
自発的でない生後六ヶ月の赤ん坊など見たことがない。そう考えれば、わかるはずだ。一四歳や四三歳になって受身の姿勢や無気力な態度を示しているなら、それは人間の本質というより、何かが原因で後天的に設定が変わってしまったのでは?まず、上記の認識に立ち返る必要がある。
「誰もがやりたくないはずのこと我慢してやる。我慢料として金をくれ!」的なモチベーションでは、これからの時代においてブレークスルーするのは無理だろうと思う。自らであれ、他者から誘発されるであれ、内的動機づけが発動しない限りは、縮小しつづける「アルゴリズム的な仕事」のイス取りゲームに参加ぜざるを得ないだろう。そして、そこで優勝することが幸福であるとは考え難い。
「絵画にしろ彫刻にしろ、外的な報酬ではなく活動そのものに喜びを追い求めた芸術家のほうが社会的に認められる芸術を生み出してきた。結果として、外的な報酬の追求を動機としなかった者ほど、外的な報酬を(生涯では)得た」これが理想。ただ、たしかにその通りだと思うが、こればかりは、ほんの一握りの成功者の事例であり、羨ましい限り。凡人に出来る選択肢は2つ。好きな事を仕事にできるか? それとも、今の仕事を好きになるか?
僕個人として、かれこれ数十年考え続けても答えの出ない選択肢だ。実に悩ましい問題。
それにしても、本著のような概念が浸透してくると、今後「モチベーションクレクレ厨」みたいな人種が増大しそうな予感もある。「報酬は少なくてもいいからモチベーションをくれ!」みたいな。
企業のマネジメントはどうあるべきか?
ザッポスの創業社長シェイ見事な模範解答。突っ込みどころがありません。
「人が何をコントロールしたいと感じるかは本当に人それぞれです。ですから、自律の中で一番重要な側面は、誰にとっても同じではないと思います。人によってそれぞれに異なる欲求があるので、雇用主にとってもっとも有効な戦略は、従業員一人ひとりにとって何が大切なのかを理解することではないでしょうか」
こんな神ばかりが多数誕生するとは考え難いという問題以外は。
一方、こんな真逆な考え方もあるようです。
匿名希望のビジネスリーダーは、採用面接を行うときに、応募者にこう告げるのだという。「他人からモチベーションを与えられる必要がある人物を採用するつもりはありません」正直、コレ好き。スッキリするなぁ。
そんなこれからの時代において一番重要なのは、<マスタリー>〜自分にとって意味のあることを上達させたいという衝動〜じゃないかと個人的に思う。組織に身をおくにしても、個人であるにしても。
マスタリーの漸近線は、欲求不満を引き起こす。なぜ、人は完全に到達できないものを求めるのだろうか。だが一方でそれが魅力でもある。だからこそ、到達しようとする価値がある。喜びは、実現化することよりも追求することにある。とどのつまり、マスタリーはどうしても得られないからこそ、達人にとっては魅力的なのであるそして、以下の言葉が胸に刺さった。
自分が極めたいことを見付け出し、それを達成しても決して心から満足出来ないということを知り、それでもかまわないと受け容れること
ロバートBライシュ 元アメリカ合衆国労働長官
※ただし、本著の前提として重要なのは一定ラインの収入を確保している場合においてです。生存の危機に関わるような状況ではこの限りではないでしょう。そこは線を引いて受け入れる必要があります。
モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか
ダニエル・ピンク 大前 研一
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その科学が成功を決める
リチャード・ワイズマン 木村 博江
ツイッターノミクス TwitterNomics
タラ・ハント 津田 大介(解説) 村井 章子
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デール カーネギー Dale Carnegie 山口 博
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コメント
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俺もこの本を読みたいと思っていました。平積みしてますよね!たつさんの文章を読んでいたら益々気になる本になりました
投稿: D輔 | 2010年8月 2日 (月) 07:09
気になる。。。
最近、モチベーション下がりっぱなしです。
投稿: Hi+Na | 2010年8月 2日 (月) 17:40
D輔>
D輔の仕事なら、特に必読だね。
Hi+Na>
読め!
投稿: たつ | 2010年8月 2日 (月) 19:27
この本、マインドマップにしたら気持ち良さそうな本ですね。
僕は最近色んな本を読んだ時にこのオンラインでマップを作れるWebアプリでマップを作って頭の中を整理してます。
https://www.mindmeister.com/
投稿: メカヤマ | 2010年8月 3日 (火) 13:40
メカヤマさん>
僕も一時期、マインドマップでまとめてた頃がありますが、なかなか続かなくてやめましたww
投稿: たつ | 2010年8月 4日 (水) 12:59